アーバンデータチャレンジ2023でGTFS賞を授与しました

アーバンデータチャレンジ2023(UDC2023)with 土木学会インフラデータチャレンジ2023(IDC2023)(主催:一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会、公益社団法人土木学会 等)は地域課題の解決を目的にデータ活用型コミュニティづくりと作品コンテストを行う取組です。
日本バス情報協会では、今回初めてUDC2023のコンテスト応募作品の中からGTFSデータの作成・利活用をしている作品をピックアップし、優秀な作品にGTFS賞を授与しました。
UDC2023全体で約130の作品応募があり、うち9作品がGTFS関連作品でした。審査の結果、最優秀賞1作品、優秀賞2作品の計3作品を表彰しました。表彰は2024年3月9日に開催されたUDC2023ファイナルで行いました。
受賞作品は次のとおりです。また、審査結果の上位5作品について、協会役員による審査員のコメントを掲載します。

【GTFS賞最優秀賞】Bus TimeTable by Edge Runtime(代表者:羽田野勇汰)
【GTFS賞優秀賞】地方公共交通の運用の効率測定を自動化するMaaS DXサービス(代表者:重山陽一郎)
【GTFS賞優秀賞】安芸高田市に人を集めたい!(代表者:赤川颯音)

最優秀賞 Bus TimeTable by Edge Runtime

  • 作者
    • 羽田野勇汰、住谷祐太(電気通信大学)、池澤隆人(電気通信大学)、伊藤尚紀(電気通信大学)
  • 作品概要(応募資料による)
    • 3行のHTMLタグを貼るだけで、自動更新される最新のバス時刻表を任意のWebページに埋め込めるツールです。運用コスト削減のため、APIを持たないストレージのみのアーキテクチャで実現しました。さらに、BuTTERで利用している技術を他のアプリやWebサイトからも利用しやすくするため、APIやNPMモジュールとしても公開しました。【作品説明資料
  • 審査員コメント
    • 実用性が高いシステムを、使える状態まで開発しており評価出来ます。レイアウトやビジュアルをもう少し作り込むか、あるいはCSSなどで大きくカスタマイズできるかなど、見た目をより良くする方向に提案があればさらに良かったです。一方で、技術的には、果たしてニーズと合っているか少し疑問を感じます。このようなシステムを必要とする人は、自前でサーバやプログラムの実行環境を用意できない(したくない)人が多いのではないでしょうか。その場合に、システム運営者が集中的にデータをホストするようなモデルの方が、現実的に実現しやすいとも思います。
    • 実用性が高く、ニーズは高いと思います。GTFSデータの普及に貢献できると思います。実際に使ってみましたが、簡単にWEBサイトに埋め込めました。配信プラットフォームをどこが運営するのかが課題ですが、すぐにでも使ってみたいです。ホテルや観光施設、公共施設のアクセス情報ページに埋め込む情報として用途があると思います。agency_urlにより、バス会社へのサイトへリンクできればより良いです。路線再編により、バス停が廃止になったときの挙動が気になります。欲を言えば、新宿駅西口のように標柱が多数ある場合に1つにまとめられる(複数の乗り場を一括表示)オプションもあると良いです。
    • アイデア及び、運用コストを削減のアイデア、API等の公開について評価いたします。同区間を運行する複数バス事業者の時刻情報が束ねられると更に便利なものになると思います。今後のブラッシュアップに期待しております

優秀賞 地方公共交通の運用の効率測定を自動化するMaaS DXサービス

  • 作者
    • 重山陽一郎(高知工科大学)、有本勇(シンギュラリティ・ソサエティ)、中川真以(シンギュラリティ・ソサエティ)
  • 作品概要(応募資料による)
    • 地方の公共交通を維持するには効率的な運用が必須だが、その基礎資料となる詳細な乗降データの取得は、人員と予算の制限からかなり難しい。そこでバスの利用状況を計測するスマホアプリを開発・運用中である。GTFSの経路情報とGPSの連動により、乗務員が乗降客数のみを入力するだけで詳細なデータを全自動で毎日出力している。これにより今まで把握できなかったデータに基づいてバス路線の見直し等に活用できる。【作品説明資料
  • 審査員コメント
    • 似たようなソリューションはありますが、実用的に作り込まれていると感じました。乗車前の点検や燃料メーターのチェックなどと一体化するなど、細かい作り込みが現場に寄り添っていて、現場レベルで有用性を実感できるような作りになっていると感じました。一方で、取得したデータの処理方法や活かし方はまだこれからだと思います。コミュニティバスのようなバスで、日々精密にデータを取得して何が分かるか、どのように可視化したらデータの特徴があぶり出せるか、など挑戦すべき課題はまだまだあります。ぜひその領域でも、実践を踏まえた提案を期待しております。技術的な観点では、GTFSには仕業データなどは含まないので、どのようにデータ生成をしているのか、スマホから得られたデータと trip_id の紐付けをどのように行っているのか(大規模なバス事業者でもそのままの技術が使えるか等)などは、手法やノウハウをぜひ共有してほしいと思います。
    • コミバスでの乗降調査をスマホ・クラウドで行うというのは、オーソドックスですが重要なテーマですね。運行業務と乗降調査の両方を対象にしているのが意欲的です。GTFSに基づいて通過判定し、UIはシンプルなボタンだけできるにしたのが良いですね。香南市で1年半の実証をしてフィードバックを得ているのも素晴らしいです。
      大学の地域交通研究室による「DX」としては、取ったデータをどのように意思決定に活かしていくか示していただけるとより良いですね。「オープンデータ」という観点では、利用実績の情報公開、さらには政策反映の見える化などにも期待が高いです。
      細かいところでは、GTFSに無い仕業情報はどのように紐づけているのか気になりました。(その筋屋業務用データ?)
    • データ取得を容易にすることで自治体・事業者にとっての初期のハードルを下げることにはとても有効である。流行りのDXやMaaSなどの大きな流れに繋げていくためには、こういった地に足の着いた取り組みが重要であり、もっと評価されるべきだと考えます。

優秀賞 安芸高田市に人を集めたい!

  • 作者
    • 赤川颯音(広島工業大学)、有安 健志(株式会社中電工)・伊藤 聖永(広島大学)・清水 怜一郎(近畿大学)
  • 作品概要(応募資料による)
    • 広島県の観光地は南部に集中しており、宿泊費などの観光消費額は全国的にも低い水準である。新幹線、高速道路といった1次交通は全国で整備され交通機関の利便性は日本の魅力の1つ。一方で主要駅から観光地までの2次交通は整備されていない場所もあり今だ発見されていない地方の魅力があることに着目した。私たちは安芸高田市の見えない公共交通機関のGTFS化を行い、広島県全体の魅力向上に取り組んだ。【作品説明資料
  • 審査員コメント
    • データを作成し、行政にはたらきかけたことは素晴らしいです。バス停を調査して発見があったというレポートもよかったです。地方のコミュニティバスを観光で利用してもらうためには、魅力あるスポットを発掘することは大切ですね。データと魅力スポット・観光ルートとの結び付けであったり、バスを利用してみたくなる提案があれば、さらに良いです。
    • 単純にGTFSデータを作っただけではなく、関係者を巻き込みデータ活用を広げていった点を評価します。一方、バスのデータは更新がつきものなので、行政機関とともにデータの更新手段についても検討頂ければ、今後の横展開も期待できると思います。
    • 交通に関わるデータ作成だけでなく、データある前提での観光サービスの提案や、アナログ(現地での視認)によって得られるものと組み合わせることでの改善提案など繋げられている点など、交通だけでないデータ活用まで構想されている点が素晴らしい。

入賞 岐阜ロゲ ver.2

  • 作者
    • 宮田 明(NPO岐阜aiネットワーク)、宮本麻衣(NPO岐阜aiネットワーク)、大澤道史(NPO岐阜aiネットワーク)、畑中英理子(NPO岐阜aiネットワーク)早野哲平(Sumasen株式会社)、出口瑞渉(Sumasen株式会社)竹井優馬(名古屋大学)
  • 作品概要(応募資料による)
    • 岐阜県内でのロゲイニングイベント「岐阜ロゲ」に関するアクティビティ作品です。NPO岐阜aiネットワークが主催し、観光データの再整備と観光アプリの構築を目指しています。具体的には、岐阜県各地でのロゲイニングイベントの実施、視覚障がい者や高齢者への支援、地域特有の課題への対応が含まれています。また、公共交通機関のデータを活用した観光推奨エンジンの開発にも取り組んでおり、将来的には障がい者ナビゲーションシステムの開発も計画しています。【作品説明資料
  • 審査員コメント
    • 岐阜県内のGTFSデータを活用いただきありがとうございます。公共交通利用促進策として、特に子供・学生においてはゲーム性があることが有益だと考えております。将来展望としての「観光推奨エンジン」にも期待しております。
    • 高山のGTFSデータをマニュアルで作成した点と、次年度の推奨エンジンにGTFSを組込み、公共交通機関を含めたベストルートを提案できるようにする計画を評価します。期待しております!
    • 岐阜ロゲという大きな、多くのテーマを持つプロジェクトでGTFSを活用してもらえていることは、交通関係者以外への普及という意味でも大きな意義があると思います。今後、GTFSを活用した推奨ルートの提供を開発予定とのことであり期待しています。

入賞 車窓Grapher

  • 作者
  • 羽田野湧太、齋藤悠宇、富木菜穂、三輪哲大
  • 作品概要(応募資料による)
    • 車窓Grapherは日常のバス乗車を観光体験に変えます。バス車内でスマホ画面ではなく車窓を眺めてみませんか? GTFS/GTFS-RT(都営バス)とPlateauデータを活用し、これからあなたの車窓に見えるランドマークをお知らせします。見えたランドマークを撮り逃がしません。インストール不要で、スマホ通知と地図という来街者も直感的にわかりやすいUIです。全国のバス・鉄道への拡張も可能な仕組みです。【作品説明資料
  • 審査員コメント
    • アイディア、技術ともよく考えられています。UIがシンプルなのもよいです。しかし、シンプルであるがゆえに、車窓のイメージがわきにくい面も否めません。東海道新幹線にて、富士山が見えるというアプリならアリかもしれません。
    • GTFS、GTFS Realtime、Plateauと多様かつリッチなデータを使って、3Dかつリアルタイムの動くものを作っている技術力が素晴らしいです。インデキシングなどの処理の工夫も流石ですね。有名なランドマークが見えるかどうか通知を受けると路線バスが楽しくなる、というコンセプトには疑問がありました。より地域密着な名物やストーリーのコンテンツを集める工夫があると良いかもしれません。
    • 多くのデータを組み合わせて実現している点は、UDCのねらいに合致していて好ましいです。ランドマークが見えるか見えないかがどの程度正しく判定されているかは確認したいので、実際に青戸車庫~浅草寿町の都バスに乗ってスカイツリーを見てみましたが、バスが歩道側車線を走っているためか沿道の建物で実際には見えない場所もありました。