1.バス情報に関する現状と課題

(1) 標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)によるバス利用者への情報提供

 現在、公共交通の利用者はスマートフォン等の経路検索サービスを利用してバスの時刻や運賃を検索することが多いが、中小のバス事業者やコミュニティバスでは経路検索サービスに掲載されていないことが多い。このため、国土交通省では 2017 年 3 月に「標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)」を策定し、その後、バス事業者や市町村による GTFS-JP データの作成、都道府県による域内バスの GTFS-JP データ整備事業等が行われ、2020 年 6 月現在約 260 1 のバス事業者・市町村が GTFS-JP データを整備しオープンデータとして公開している。これらの GTFS-JP データの整備に当たっては、大学、バスデータ整備事業を行う民間事業者、GTFS-JP 作成ツールの開発者等がバスデータ整備の普及のための講演、ツールの提供や講習会、技術的な支援等を行ってきた。また、最近、バスの位置情報等のリアルタイムデータ(GTFS-RT)を整備・公開するバス事業者も出現している。今後、GTFS-JP、GTFS-RT の整備に取り組むバス事業者や市町村、都道府県が増えることが想定され、各種の支援の充実が必要となっている。

(2) 作成された GTFS-JP データの更新と質の向上

 GTFS-JP データは整備された後、常にダイヤ改正等によりデータを更新する必要があるが、国や都道府県がデータ整備を支援する事業ではデータ更新が担保されていない場合がある。また、外注により整備されたデータでは GTFS-JP の仕様に合っていないなど品質が十分でないデータもある。さらに、データ仕様自体も改良・更新されていくため、仕様に適合したデータが継続的に整備されることが必要である。このため、データを作成するバス事業者や市町村等に対して経常的に技術的な支援を行っていく必要がある。支援の対象は全国にわたり、数も多いことからオンラインによるサポートコミュニティの構築も必要となる。

(3) 経路検索サービス以外のバス情報の利活用

 作成したバスデータの利用が経路検索サービスへの掲載にとどまっていれば、バス事業者や市町村にとってのバスデータを整備する効果は限定的である。作成したバスデータをデジタルサイネージや時刻表の作成、バス事業の申請書類の作成等に活用する取組が始まっており、リアルタイムデータを用いて運行の遅れの分析やダイヤの改善を行う取組もある。バス事業の近代化には GTFS-JP を始めとする各種データの整備・標準化が必要である。さらに、バス情報は公共交通計画やまちづくりでの利用や将来はバス事業における電子申請や MaaS の基礎データとして活用することが想定される。
 これらのバスデータの利活用を進めることによりバスの利便性向上や地域の足の確保、バス事業の効率化等に大きな効果を生むためには、これらのバスデータの利活用の手法の開発や普及を大学や国・自治体、バス事業者等と連携して推進していくことが必要である。
 特に、新型コロナ感染症によりバスを取り巻く環境は一層厳しくなっており、今後の公共交通政策を検討するためにもバスデータの利活用が求められる。

2.一般社団法人日本バス情報協会の設立と事業内容

 このようなバス情報に関する課題を解決するためには、バスデータ整備を支援する体制を整備することが必要である。このため、バス事業に関する情報の整備・流通・利活用を推進することにより、バス事業の質の向上及び効率化、バス利用者の利便性の向上、まちづくりその他の各分野と連携したバスの発展等を図ることを目的として、一般社団法人日本バス情報協会(仮称)を設立する。
 本協会では、次の事業を行う。

(1)都道府県、地方運輸局、コミュニティバス等を運行する市町村、バス事業者等に対するバス情報の整備・流通・利活用に関するコンサルティング
(2)バス情報の整備・流通・利活用に関する講習会、勉強会等の開催
 ・対都道府県、市町村、バス事業者、コンサルタント等
 ・バスデータ整備の意義の理解、データの整備・利活用技術
(3) バス情報の整備・流通・利活用に関する技術的支援データ整備発注標準仕様書 ・検索サービス掲載手引き ・サポートコミュニティ
(4) バス情報の整備・流通・利活用に関するプラットフォーム、ツール等の提供
 ・オープンデータリポジトリ
 ・GTFS-JP 作成ツール
 ・GTFS-JP 検証ツール
(5) バス情報に関する事業者等の連携の推進
 ・ダイヤシステム、運賃システム、経路検索サービス事業者、国・自治体、MaaS
(6) バス情報の整備・流通・利活用に関する調査研究
 ・バス情報分析、バス情報利活用の効果測定

3.様々なバス情報に関係する方々との連携

 本協会の活動は、次のようなバス情報に関係する者と連携して行う。
 ・バス情報整備推進や公共交通政策を行う国(国土交通省、地方運輸局等)、地方公共団体
 ・バス事業及びバスデータ整備、利活用の支援を行っている大学、民間事業者
 ・先進的にバスデータを整備・利活用しているバス事業者、市町村
 ・GTFS-JP の利用者である経路検索サービス事業者
 ・データ作成ツールの作成者、バスダイヤシステムや運賃システム等を提供する民間事業者
 ・まちづくりなど公共交通に関連する取組を行う大学、市民団体、自治体等

4.会員になっていただきたい方々

 ・学識経験者
 ・CP
 ・ダイヤ・バスロケ・運賃機器メーカ
 ・MaaS 関係企業
 ・交通事業者

2020年8月